CASE 921.6
症例 6.17歳,女性
13歳 1月 |
左側頭葉の腫瘍摘出術を受けた。 病理組織診断はpolymorphous spongioblastoma。 CTスキャンにて経過を観察 |
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17歳 3月 | 同じ部位にenhanced lesionが出現,再発と診断。 |
4月 13日 | 腫瘍摘出術を施行。 |
手術所見 | 腫瘍は充実性であったが,深部には嚢胞もあり,その壁も含めて全摘した。 |
画像 |
CASE 921.6 SUMMARY
1.組織学的診断:pleomorphic xanthoastrocytoma
スペース
2.診断に至る要点と注意点
- 若年女性の側頭葉腫瘍,初回摘出後4年で再発,その後5年間再発はない.
- 嚢胞を伴う充実性腫瘍
- 細胞密度はやや高く,極めて多態性の強い細胞から構成されている
- 多核巨細胞,大型類円形細胞,紡錘形細胞,小型円形細胞等
- 分裂像は乏しい
- 血管内皮の増殖や壊死はない
- 腫瘍細胞の xanthomatous change
- 間質に xanthoma cells, 血管周囲にリンパ球浸潤
- 変性産物:Rosenthal線維, granular body の出現
(一見,悪性のグリオーマを疑う所見)
3.本腫瘍の病理学的概要
- 1979年,Kepesらが提唱した腫瘍概念
- 30歳以下の若年者の大脳半球(特に前頭葉と側頭葉)脳表に好発
- 高頻度に嚢胞を合併,その壁に腫瘍の結節が見られる
- astrocyteの特徴を持つ腫瘍細胞,多態性に富む
- 核分裂像は乏しい
- 細胞質に脂肪滴を含むxanthoma細胞
- 細胞間に豊富な好銀線維網の形成
- 免疫組織化:GFAP, S-100 蛋白, vimentin, NSEが陽性
- 電顕:細胞質のグリア細線維,細胞表面の基底膜
- 患者の予後は比較的良好
4.Comment
Pleomorphic xanthoastrocytoma(PXA)多形黄色星細胞腫
定義 脳の表層に発生する星細胞腫で、腫瘍細胞には顕著な多形性があり、しばしば細胞質内脂肪滴の出現を認めるものである
特徴 小児と若年成人の大脳半球(特に前頭葉と側頭葉)の脳表に好発する。高頻度に嚢胞を合併し、その壁に腫瘍の結節が見られる。
腫瘤の大半がクモ膜下腔に存在する例もある。腫瘍細胞は星細胞の特徴をもち、GFAP 陽性である。細胞の多形性が顕著で、奇怪な核を持つ巨細胞も出現する。核分裂像は乏しく、組織の壊死はみられない。
大型の腫瘍細胞には細胞質に脂肪滴が含まれていることがある。 また granular bodies の出現もしばしば認められる。細胞間には豊富な好銀線維網が形成されている。血管周囲にリンパ球浸潤を認めることもある。
5.文献
- Kepes JJ, Rubinstein LJ, Eng LF: Pleomorphic xanthoastrocytoma:A distinctive meningocerebral glioma of young subjects with relatively favorable prognosis.Cancer 44:1839-1852, 1979
- Kepes JJ, Rubinstein LJ, Ansbacher L, et al: Histopathological features of recurrent pleomorphic xanthoastrocytomas: further corroboration of the glial nature of this neoplasm. A study of 3 cases.Acta Neuropathol (Berl) 78:585-593, 1989
- 川野信之:Pleomorphic xanthoastrocytoma: 病理組織診断の要点と最近の知見. 病理と臨床 9:604-610, 1991
- Kawano N: Pleomorphic xanthoastrocytoma (PXA) in Japan: Its clinicopathologic features and diagnostic clues.Brain Tumor Pathol 8:5-10, 1991
- Grant JW, Gallagher PJ: Pleomorphic xanthoastrocytoma. Immunohistochemical methods for differentiation from fibrous histiocytomas with similar morphology.Am J Surg Pathol 10:336-341, 1986