スライドセミナー「脳腫瘍」

CASE 921.13

症例 13. 36歳,女性

                                                           
34歳          めまい,鼻出血が時々みられた。
35歳          頭痛,嘔気が出現,次第に増強。その後視力低下,全身倦怠感が出現。
35歳  12月     眼科医で両側うっ血乳頭を指摘された。
36歳   2月  3日 脳外科入院。CTスキャンにて第3脳室付近を占めるやや右側に大きいhigh density areaが認められる。
36歳   2月 16日 脳室腹腔短絡術(V-P shunt)
35歳   4月      場所の失見当識,意欲低下,精神症状が出現。
35歳   5月      傾眠傾向,悪心,嘔吐,両側うっ血乳頭などが出現。
35歳   6月      V-P shunt再建術,照射56.5Gy。
35歳  10月     傾眠傾向,眼球・四肢自発運動減少,両下肢病的反射出現,尿・便失禁がみられ,下旬には呼吸困難出現。
36歳   11月     永眠
標本は剖検時に松果体部腫瘍より作成したもの。
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CASE 921.13 SUMMARY

1.組織学的診断:pineocytoma

スペース

2.診断に至る要点と注意点

  1. 36歳女性の松果体部腫瘍
  2. 中等度の細胞密度,分葉状構造
  3. 均一な類円形核と境界の不明な細胞質を持つ腫瘍細胞
  4. 細胞間や血管周囲に豊富な線維性基質
  5. 好酸性の無核野を囲む核のロゼット状配列 pineocytomatous rosette
  6. 核分裂像は乏しい
  7. 組織の壊死や血管内皮の増殖はない

3.本腫瘍の病理学的概要

  1. 若年から高齢者まで
  2. 第3脳室後半部の境界鮮明な充実性腫瘤
  3. 均一な類円形核を持つ腫瘍細胞,線維性基質
  4. 血管と線維性結合織によって区画された分葉構造
  5. 大型のロゼット(pineocytomatous rosette)
  6. 軸索鍍銀法では,腫瘍細胞の突起先端がゴルフクラブ状に腫大

    (club-like expansion)

  7. 免疫組織化学:synaptophysin, NSE, NFP, retinal S-antigen,
    chromogranin A など
  8. 電顕:細胞質のanulate lamellae, microtubules, synaptic ribon,
    microtubular sheaves, 9+0 type cilia, 突起内のdense-cored
    vesicles, clear vesicles, 突起のシナプス様構造など

4.Comment

Pineocytoma 松果体細胞腫

 定義 松果体の実質細胞に類似の形態を持つ、良く分化した細胞から成る腫 瘍である。

 特徴 若年から高齢者まで発生し、松果体部に境界鮮明な充実性腫瘤を形成する。しばしば血管結合織性の間質が腫瘍組織を区画して分葉構造を形成する。 均一な類円形核と境界の不明瞭な弱好酸性細胞質を持つ腫瘍細胞が、様々な量 の線維性基質を伴って増殖する。好酸性無核野の周囲に核がゆったりと配列する大きな Homer Wright ロゼット(pineocytic rosette)が見られることもある。 軸索鍍銀法では腫瘍細胞が好銀性突起をロゼットの中心に向かって伸ばしており、 しかもその突起先端がゴルフクラブ状に腫大している所見(club-like expansion)が認められる。好銀性突起の発達の程度は腫瘍細胞の分化度を知る指標となる。 免疫組織化学的には synaptophysin, chromogranin A が毟性で、一部の症例は retinal S-antigen を発現する。腫瘍細胞が神経細胞、グリア、網膜への分化を示すこともある。             

5.文献

  1. Hassoun J, Gambarelli D: Pinealoma: need for an ultrastructural diagnosis. Fields WS ed: Primary Brain Tumors. A Review of Histologic Classification. Springer-Verlag, New York, pp.82-85, 1989

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