スライドセミナー「脳腫瘍」

CASE 921.16

症例 16. 43歳,女性

27歳        頭痛,無臭症が出現。Olfactory meningiomaの診断で手術を受けた。
35歳        左眼視力障害が進行,腫瘍再発の診断にて手術。
40歳        閉感出現。
43歳 11月  7日 耳鼻科で鼻腔内に腫瘍が充満していると指摘された。
43歳 11月 24日 脳外科入院
43歳 12月  3日 鼻腔内の腫瘍をほぼ全摘。
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CASE 921.16 SUMMARY

1.組織学的診断:meningothelial meningioma

スペース

2.診断に至る要点と注意点

  1. 43歳の女性,再発性の髄膜腫
  2. 中等度の細胞密度,結節状の増殖傾向
  3. 均一な類円形核,境界の不明瞭な細胞質を持つ腫瘍細胞
  4. シート状ないし合胞細胞様の配列,渦巻状配列
  5. 核には異型はなく,核分裂像は乏しい
  6. 壊死はない

3.本腫瘍の病理学的概要

  1. 全頭蓋内腫瘍の22.2%
  2. 成人の女性に多い
  3. テント上(傍矢状洞,大脳円蓋部,蝶形骨縁,大脳鎌,鞍結節,嗅溝

    テント下(後頭蓋窩,小脳橋偶角部,脊髄)

    稀に側脳室内
  4. 充実性の硬い腫瘤,硬膜に強く付着
  5. クモ膜細胞に類似の腫瘍細胞がシート状に配列,細胞境界不鮮明核分裂像や,壊死像は見られない
  6. 渦巻状,玉葱状の配列(whorled cell arrangement, onion-like formation)
  7. 免疫組織化学:vimentin, EMA
  8. 電顕:複雑な嵌合を示す細胞突起,デスモソーム様の接着装置

    細胞質の中間径細線維

4.Comment

meningothelial meningioma 髄膜腫

 定義 髄膜腫 meningioma は Cushing(1922)によって、原発性髄膜腫瘍として定義 された。WHO分類では、腫瘍性格を持つ髄膜皮細胞(meningothelial cell) から構成される腫瘍を髄膜腫として位置付けている。  髄膜は硬膜、くも膜、軟膜の3層から構成されている。これらを構成する細 胞は神経堤と間葉系から由来するといわれている。髄膜構成細胞の主体を成す ものが髄膜皮細胞である。髄膜皮細胞には仮想的な硬膜下腔の硬膜側を覆う細 胞(硬膜境界細胞 dural border cell)、硬膜下腔のくも膜側を覆う細胞(く も膜障壁細胞 arachnoid barrier cell)、くも膜顆粒の表面を覆う細胞(く も膜帽細胞 arachnoid cap cell)やくも膜下腔に存在する細胞、軟膜の表面 を被覆する細胞などを含む総称であり、場合によっては、髄膜に存在する線維 芽細胞(fibroblast)をも含んだ概念として使用されている。 髄膜皮細胞とく も膜細胞(arachnoidal cell)が同義語として使われる場合もある。髄膜皮細 胞は腔の表面を被覆し、上皮に似た性格を持つところから、髄膜上皮細胞と呼 ばれることもある。  このような多面性を持つ髄膜皮細胞から発生する腫瘍である髄膜腫は、多彩 な組織像を示すことが特徴である。多くは良性の性格を示すが、明らかな悪性 性格を持つ髄膜腫や、良悪境界領域の腫瘍もあり、「髄膜腫」の腫瘍概念は組 織型と悪性度の観点からかなりの広がりを持っている。2.髄膜腫の分類  多様性を持った髄膜腫は様々に分類されているが、その一例をWHO分類か ら引用する。

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        Tumours of the meninges

           Tumours of meningothelial cells

               Meningioma

                variants: Meningothelial

                   Fibrous (fibroblastic)

                    Transitional (mixed)

                    Psammomatous

                    Angiomatous

                    Microcystic

                    Secretory

                    Clear cell

                    Chordoid

                    Lymphoplasmacyte-rich

                    Metaplastic

                Atypical meningioma

                Papillary meningioma

                Anaplastic (malignant) meningioma

            Mesenchymal, non-meningothelial tumours

                Benign neoplasms

                Malignant neoplasms

                Primary melanocytic lesions

                Tumours of uncertain histogenesis

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        WHO International Histological Classification of Tumours

        Kleihues P, et al: Histological Typing of Tumours of the

        Central Nervous System. 2nd edn. Springer-Verlag, 1993

    

 良性の髄膜腫は3つの基本型があり、それぞれ meningothelial,|ransitional, fibrous meningioma と呼ばれる。 これがいわば典型的髄膜腫(typical meningioma)と考えられる。 この典型的髄膜腫は頻度が高く、髄膜腫のほとんどを占めていると言っても過言ではない。それ以外にいくつかの髄膜腫の亜型があるが、それらの頻度は低い。  悪性性格を持った髄膜腫としては、 異型髄膜腫(atypical meningioma)、 乳頭状髄膜腫(papillary meningioma)、 退形成型髄膜腫(anaplastic meningioma)の3型が区別されている。

 肉眼的所見髄膜腫はテント上に好発し、傍矢状洞部、大脳円蓋部、大脳鎌、蝶形骨縁、鞍結節、嗅溝などに多い。テント下では後頭蓋窩、小脳橋偶角部、脊髄に見られこともある。 稀に側脳室の脈絡叢からも発生し、脳室内腫瘍を形成する。硬膜に強く付着した充実性の硬い腫瘤を形成する。形は球形、半球形などで、滑面は灰白色実質性であり、嚢胞を伴うことは稀である。 脳実質との境界は極めて鮮明であるが、骨への浸潤性増殖を示すことはある。

 

 組織学的所見

 髄膜皮細胞に類似の腫瘍細胞の増殖が基本であるが、各組織型によって細胞の形態、配列、細胞の産物、間質の状態などに違いがある。

 

 Meningothelial meningioma 髄膜皮型髄膜腫

 髄膜腫の基本的な組織型で、類円形の核と弱好酸性の豊かな細胞質を持つ腫瘍細胞がシート状に配列して集団を作りながら増殖する傾向がある。 細胞境界は不鮮明であり、合胞細胞型髄膜腫(syncytial meningioma)とも呼ばれている。 細胞は渦巻状、玉葱状に並び(whorled cell arrangement, onion-likeformation)、独特な organoid の形態を示す。 部分的に核の腫大やクロマチン増量を認めることはあるが、核分裂像は乏しく、壊死像は通常見られない。

                                      

5.文献

  1. Scheithauer BW: Tumors of the meninges: Proposed modification of the World Health Organization classification. Acta Neuropathol 80:343-354, 1990

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