スライドセミナー「脳腫瘍」

CASE 921.20

症例 20. 52歳,男性

                                                                
51歳  9月    後頭部痛で発症。
51歳 10月    嘔気,嚥下困難,失計算,右半身不全麻痺が出現。
51歳 12月    入院。意識障害,失見当識,右半身麻痺,頭蓋内圧亢進症状,尿失禁,Lt-CAGで前頭葉にtumor stain
51歳 12月 17日 腫瘍全摘出術術後照射34Gy,肝炎併発。
52歳  3月 27日 傾眠傾向,嚥下困難出現。
52歳  4月    右半身麻痺,うっ血乳頭あり。照射(28Gy)と化学 療法を開始。意識障害は改善。
52歳  7月    傾眠傾向再発,痴呆,異常行動,尿失禁出現。放射線治療(28Gy)。
52歳 8月    半昏睡から昏睡状態へ進行。
52歳 9月    死亡。
標本は剖検時のもの(右側頭葉内側下部)。。
画像

このページのトップへ

症例一覧


CASE 921.20 SUMMARY

1.組織学的診断:malignant lymphoma

スペース

2.診断に至る要点と注意点

  1. 52歳の男性の大脳腫瘍,1年の経過で死亡
  2. 血管周囲腔を中心に腫瘍細胞が増殖,さらに脳実質内に浸潤
  3. クロマチンの豊富な類円形核と狭い細胞質を持つ腫瘍細胞
  4. 細胞配列の特徴はない,髄様に増殖
  5. 脳実質には reactive astrocytes の増生が顕著

3.本腫瘍の病理学的概要

  1. 頭蓋内腫瘍の約1%
  2. 中高年者に発生し,やや男性に多い
  3. 大脳半球に好発,基底核,小脳,脳幹にも発生
  4. 単発あるいは多発性の境界不鮮明な腫瘤を形成
  5. 非ホジキンリンパ腫,び漫性大細胞型,B細胞性
  6. 血管周囲のVirchow-Robin腔に浸潤する傾向が強い
  7. 血管を中心とする同心円状の好銀線維形成
  8. 腫瘍内に星膠細胞の反応性腫大

4.Comment

Primary malignant lymphoma 脳原発悪性リンパ腫

 特徴 中枢神経系に発生する悪性リンパ腫は,当初は肉腫(perivascular sarcoma,reticulum cell sarcoma, perithelial sarcoma, etc)あるいはミクログリアの腫瘍(microgliomatosis)と考えられていたが, 現在では他の臓器に発生するリンパ腫と本質的に変わらないことが証明された.頭蓋内腫瘍の約1%を占め,中高年者に発生し,やや男性に多い傾向がある.大脳半球が好発部位であるが,基底核,小脳,脳幹にも発生する. 単発あるいは多発性の境界不鮮明な腫瘤を形成したり,軟化病巣に類似の肉眼像を示すこともある. 腫瘤によるmass effect は乏しい.組織学的には大部分の症例が非ホジキンリンパ腫であり,ホジキン病の報告は少ない. び漫性大細胞型リンパ腫が多く,大部分の例はB細胞性である. 腫瘍周辺部では,血管周囲の Virchow-Robin 腔に浸潤する傾向が特に強く,鍍銀染色では血管を中心とする同心円状の好銀線維形成が見られる. 腫瘍内に星膠細胞の反応性腫大が強く現れる点も特徴である. 血管腔内を増殖の場として腫瘍細胞が増殖し,多発性脳梗塞を形成するneoplastic angioendotheliosis はB細胞性リンパ腫の一種であると考えられている.

このページのトップへ

症例一覧へ