スライドセミナー「脳腫瘍」

CASE 921.9

症例 9.5歳,男性

3歳 7月    頭蓋内圧亢進症状にて発症。CTスキャンで小脳正中部にenhanced massが認められ,第4脳室部腫瘍と診断された。
3歳  7月27日 腫瘍全摘出術が施行され,術後54Gyの局所照射が行われた。CT上腫瘤は消失し,経過は良好であった。
5歳 10月29日 頭痛出現。CTスキャンにて小脳正中部に直径3cmのenhanced massが認められ,腫瘍再発と診断。
5歳 11月12日 頭痛出現腫瘍全摘出術が施行された。
画像

このページのトップへ

症例一覧


CASE 921.9 SUMMARY

1.組織学的診断:ependymoma

スペース

2.診断に至る要点と注意点

  1. 5歳の男児の第4脳室腫瘍
  2. 一部は乳頭性,一部は充実性の血管に富む腫瘍
  3. 多列円柱上皮様の配列,しかし基底膜を欠く
  4. 腺腔形成: ependymal rosettes, ependymal tubules,ependymal canals
  5. 血管周囲性ロゼット:血管周囲に無核帯がある
  6. 核は均一,核分裂像はほとんど見られない
  7. 血管内皮の増殖や壊死巣はない

3.本腫瘍の病理学的概要

  1. 頭蓋内腫瘍の2.2%,膠腫の7%の頻度
  2. 小児に多く,第4脳室が好発部位.脊髄下部,終糸にも多い
  3. 類円形核と,境界の不明な弱好酸性細胞質を持つ細胞
  4. 血管周囲性偽ロゼットを形成:

    核が血管から離れた位置に存在し,血管近傍は細胞突起のみから成る
    核帯(kernfreie Manschetten, moose track)が形成される

  5. 組織学的亜型には

    細胞性上衣腫(cellular ependymoma):細胞密度が高く血管周囲性配列のみが目立つ腫瘍る
    上皮性上衣腫(epithelial ependymoma):管腔を囲む細胞配列(true rosette, ependymal rosette)
    が見られる腫瘍
    乳頭性上衣腫(papillary ependymoma):乳頭性細胞配列の目立つ腫瘍
    明細胞上衣腫(clear cell ependymoma):乏突起膠腫に類似のhoneycomb structureをしめす腫瘍

  6. blephaloplast(生毛体):管腔面の細胞質にPTAH染色陽性の小体
  7. 電顕:微小ロゼット,微絨毛,線毛,細胞接着装置

4.Comment

Ependymoma 上衣腫

 定義 上衣細胞への分化を示す細胞から構成される腫瘍である。

 特徴 脳室系に関連して発生する比較的境界の鮮明な軟らかい腫瘍で、第4脳室が好発部位であるが、脊髄下部、終糸にも多い。
組織学的には微細顆粒状のクロマチンを持つ類円形核と、境界の不明な弱好酸性細胞質を持つ細胞が、中等度の細胞密度を示しながら増殖している。細胞は血管に向かって繊細な単極性突起を伸ばして、血管周囲性偽ロゼット(perivascular pseudorosette)
を形成する。腫瘍細胞の細胞突起はきわめて長いので、血管近傍には細胞突起のみから成る無核帯が形成される。上衣腫に最も特徴的な構造は管腔を囲む細胞配列である。 管腔が小さいもの(true rosette, ependymal rosette)、
やや大きなもの(ependymaltubule)、広い不定形の腔を作るもの(ependymal canal)が区別されるが、本質的な違いはない。生毛体(blephaloplast)は管腔面の細胞質に認められる PTAH 染色陽性の桿状顆粒状小体であり、
繊毛の基底小体に一致する構造である。分化型の上衣腫でも腫瘍内に壊死巣がみられることがある。 免疫組織化学的には GFAP, vimentin, cytokeratin が陽性であり、管腔に面する細胞膜は EMA が陽性となる。
い。

 亜型cellular ependymoma 細胞性上衣腫 細胞密度が高く血管周囲性配列のみが目立つ腫瘍である。

 亜型 papillary ependymoma 乳頭性上衣腫 乳頭性細胞配列の目立つ上衣腫である。

 亜型 clearcell ependymoma 明細胞上衣腫 乏突起膠腫に類似の honeycomb structure を示す上衣腫である。

このページのトップへ

症例一覧へ