病理学的事項

組織像

 脳実質内において高細胞密度の腫瘍増殖、浸潤を認め、壊死巣が散見される。腫瘍中心部では腫瘍細胞はびまん性に増殖しているが、増殖巣辺縁部では血管周囲Virchow-Robin腔への伸展が見られ、perivascular cuffingを呈している。同部では血管を中心とした同心円状の好銀線維の増生を伴っている。腫瘍細胞は円形~多角形で細胞質が狭く、切れ込みやくびれなどの多形性を示す大型類円形の核を持つ。核クロマチンは網状、或いは水泡状で、1個~数個の核小体を有している。多数の核分裂像やアポトーシス像が認められる。GFAPで観察すると、周辺脳実質のみならず、腫瘍増殖巣内にも反応性に腫大したastrocyteの増生が明瞭に認められる。免疫染色では、腫瘍細胞はB細胞マーカー(CD79α, CD20)が陽性、T細胞マーカー(UCHL-1, CD3)は陰性であった。

コメント

 本例は中枢神経系原発悪性リンパ腫(primary central nervous system lymphoma, PCNSL)であり、その組織型はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma, DLBCL)である。血管周囲性の増殖や、多数のアポトーシス像、核破砕像の出現が特徴的で、典型例ではあまり迷うことなく診断できるが、特に術中の凍結標本ではgliomaや非腫瘍性の慢性炎症性病変との鑑別が問題となることがある。この場合、より形態が保たれる細胞診標本を作製しておくと診断の手掛かりが得られやすい。