断片状の腫瘍組織と脳組織が認められる。腫瘍組織では大型の腫瘍細胞がびまん性敷石状に増殖、脳組織へ浸潤し、小型リンパ球の浸潤を伴っている(two cell pattern)。腫瘍細胞は１～数個の明瞭な核小体を含む大型円形核と、淡い細胞質を有している。細胞質にはグリコーゲンが豊富に含まれ、PAS陽性を示す。細胞境界は明瞭である。多数の核分裂像が見られる。小型リンパ球は腫瘍細胞間にもみられるが、血管周囲に集簇する傾向がある。場所により泡沫状組織球の浸潤も見られる。
本例は胚腫（germinoma）である。特徴的な大型腫瘍細胞の敷石状増殖とリンパ球のtwo cell patternが基本像である。この腫瘍はしばしば肉芽性変化を示し、腫瘍細胞が少ない場合もあり、PAS染色や、免疫染色（PLAP:膜に陽性、c-kit:膜に陽性、Oct4:核に陽性、D2-40:膜に陽性）を参考に診断を進める。hCG陽性のsyncytiotrophoblastic giant cells (STGC)が含まれる場合はgerminoma with STGCと呼ばれる。